パーキンソン病のすくみ足について
パーキンソン病患者のすくみ足について調べる機会があったため、今回はすくみ足の生じる神経学的メカニズムとすくみ足に対するリハビリテーションについて、文献ベースに話していきます。
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①すくみ足について
すくみ足はパーキンソン病患者の歩行特徴の一つとして知られており、生じる場面は旋回や、認知タスクの負荷、情動など様々です。
また、すくみ足は左右へCoPが移動する際のリズムの障害として捉えられており、そのリズムが異常に速くなることで3-8Hzの周波数で交互に足が震えると言われています。
②すくみ足の生じる神経学的メカニズム
1.歩行の自動的制御の障害
すくみ足の根本的な原因は、ドーパミンの欠乏により直接路の破綻が生じ、脳幹、脊髄などの自動的制御系が抑制されることにあるとされています。
また、すくみ足には補足運動野が強く関与している可能性があります。パーキンソン病患者は、病期の初期から補足運動野の機能が低下すると言われています。これは、大脳皮質-基底核ループに補足運動野が密接に関与しているからだと言われています。
加えて、補足運動野は自動的制御系にも関与している可能性があります。これは、補足運動野が内的な運動制御に重要であるからだと言われています。
内的な運動制御とは、反復的な動作や習慣的な動作のこと指します。例えば、信号が青なら歩く、赤なら止まるといった経験に基づいた運動や、ひたすら置いてある荷物を運ぶなどの反復的な動作に基づいた運動制御を指します。そのため、補足運動野の機能が低下すると、この経験に基づいた動作が障害されることで、自動的制御の障害に影響が出ます。
このように補足運動野の機能が低下することは、すくみ足と強く関連しているようです。
また、補足運動野の機能低下がすくみ足に繋がるもう一つの理由に、ハイパー直接路の障害が関与しているとも言われています。ハイパー直接路は、補足運動野と視床下核に関連する経路であり、この経路は葛藤信号の処理(道を歩いている際に気になる光景や人通りなどがあっても、それに注意を背けずに歩くような)に重要である。
ハイパー直接路の障害と細い道を通過する際のすくみ足の発生率は相関があるようです。
2,随意的制御の増大
1で示した自動的制御が障害されると、それを代償するために大脳皮質や小脳などの随意的な制御が増大します。この随意的制御の増大が、歩行の変動性の増大などに関与しているそうです。
しかし、パーキンソン病の病期が進行すると前頭前野の機能が低下すると言われており、前頭前野の機能低下とすくみ足の発生率は関係しているようです。
3,認知機能の低下
前頭前野の機能低下により、認知機能の低下やdual task歩行能力の低下もすくみ足の発生と関係しているようです。
このように、認知的課題はすくみ足の発生に強く関係しており、特に配分性の注意や転換性の注意、選択性の注意課題などの負荷が引き金になりやすい可能性があります。
すくみ足の発生のメカニズムのまとめです。
③すくみ足への治療
すくみ足へは、一般的には薬剤や深部脳刺激などが医学的に行われています。
リハビリテーションとしては、cueing刺激などが行われており、様々な文献でその効果は議論されています。主にcueing中や直進歩行時での検証は多くされていますが、cueingなしや方向転換時などでは効果が持続しにくいという報告もあります。
現在、認知的トレーニングがすくみ足の治療に有効な可能性もあります。
これは、認知的容量を増大させることで、外部からの認知的負荷が与えられた際に対応できるようになるからであると言われています。特に、患者のすくみ足が生じる場面(dual taskや転換性の注意、運動を抑制する場面など)を評価し、歩行トレーニング中あるいは、歩行トレーニング外でそこに対したアプローチをすることが有効かもしれません。しかし、比較的FoGの重症度が低い患者に対して、有効であるとも言われており、効果もまちまちな部分はあります。
以上より、すくみあしについて話させて頂きましたが、一貫した報告はされていない点が多く、私自身も曖昧な点が多いです。特に治療に関しては、一貫されていない点も多いため、これからもっと学ぶ必要があります。。