小脳と歩行適応
今回は、勉強する機会があったため、小脳について行います。
小脳には、小脳核や小脳脚など脊髄や脳幹・大脳皮質から入力を受けたり、出力に関係するような領域があります。
小脳核の図 D:歯状核、G,E:中位核、F:室頂核
Imaging the deep cerebellar nuclei: A probabilistic atlas and normalization procedure. J. Diedrichsen,2011
小脳脚の図
Perrini P, Tiezzi G, Castagna M, Vannozzi R. Three-dimensional microsurgical anatomy of cerebellar peduncles. Neurosurg Rev.2013;36(2):215–25
このように小脳は様々な領域と関与しているため、その領域が果たす機能を理解する必要があります。
今回は、小脳脚と歩行適応に焦点を当てて以下の文献から話します。
ともに対象は健常人です。
Locomotor Adaptation Is Associated with Microstructural Properties of the Inferior Cerebellar Peduncle.Sivan Jossinger,2020
Formation of Long-Term Locomotor Memories Is Associated with Functional Connectivity Changes in the Cerebellar–Thalamic–Cortical Network.Firas Mawase,2017
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まずは下小脳脚と歩行適応についてです。
Locomotor Adaptation Is Associated with Microstructural Properties of the Inferior Cerebellar Peduncle.Sivan Jossinger,2020
以下の図はスプリットベルトと歩行適応についての図です。
歩行適応は初期学習、想起、再学習という3つの段階があります。
初期の適応とは、初めてスプリットベルトをした際に速度が変化した側の下肢が徐々にその速度の歩行に適応していくことです。(真ん中の図の緑)
想起とは、初めてスプリットベルトをしてから、再度別の時間にスプリットベルトを行った2回目以降のことを指します。つまり、初めてスプリットベルトを行った直後は、速度が変化した側の下肢のエラーは大きくなりますが、2回目にスプリットベルトを行った際にはその直後であってもエラーは減少します。
再適応も同様に2回目以降のことを指し、想起してから再度適応していく過程を指します。
図1
①以下は、初期の適応と下小脳脚の関係についです。
初期の適応には、下小脳脚が大きく関与している可能性があります。
ちなみにですが、下小脳脚は、誤差信号を伝達するための重要な経路(脊髄からの情報を下オリーブ核を介して小脳皮質に送る)であるとされています。
図2
②以下は、小脳脚の側方化についてのグラフです。
実際スプリットベルトを行っている下肢は左足であるため、左側の下小脳脚が大きく関与します。しかし、適応が大きい人ほど、右側の下小脳脚も適応に関与しているようです。つまり、歩行適応初期には両側の下小脳脚が関与していることが示唆されました。
図3
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次に上小脳脚と歩行適応についてです。
Formation of Long-Term Locomotor Memories Is Associated with Functional Connectivity Changes in the Cerebellar–Thalamic–Cortical Network.Firas Mawase,2017
①以下は歩行の初期の適応(A)、想起(B)、再適応(C)時の、小脳と視床との連絡性、小脳とM1との連絡性を指しています。
小脳と視床との連絡においては、初期の適応に比べて想起、特に再適応において有意な相関を示しています。M1においては、想起で軽い相関がありました。
つまり、歩行適応の想起と再適応には小脳と視床における上小脳脚が重要である可能性があります。
図4
②次に、以下は初期適応時には働いていないが、再適応時に働きのあった領域を示しています。小脳Ⅴ-Ⅵ葉、CrusⅠ-Ⅱ領域である小脳半球部で活動が高まっていました。実際、上小脳脚は半球部の核である歯状核と視床-運動野との経路であるため、ここからも上小脳脚の関与がわかります。
ちなみにですが、上小脳脚は大脳や脳幹へ出力し、内部モデルを構築するために重要であるとされています。
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まとめ
以上のように、適応初期では下小脳脚が、想起や再適応では上小脳脚が関与している可能性が示唆されています。
歩行適応は、小脳の障害部位でかなりことなるため、それぞれの機能を理解することは重要です。